「やりたいことが分からない」僕達はいつそんな大人になったんだろう

「やりたいことが分からない」僕達はいつそんな大人になったんだろう

2014年09月18日発行

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【今週の目次】
1 特集記事①
 「やりたいことが分からない」僕達はいつそんな大人になったんだろう

2 特集記事②
 ビジネスマンのためのマインドフルネストレーニング

3 特集記事③
 Apple Payは何を変えるのか 日本への影響は?世間一般の受け止め方とちょっと違うので記事にしてみた

4 ニュース、オレはこう思う。 


5 質問どんと来い!








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1 特集記事①

「やりたいことが分からない」僕達はいつそんな大人になったんだろう



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人間はいつ、「生きてることがそれほど楽しくなくなった」て思うようになるんだろう。いつ「人生でやりたいことが分からない」って感じるようになるんだろう。

「あのね、今日ね、僕ね、幼稚園でね・・・」。息子たちがまだ幼稚園に通ってたころ、僕が帰宅すると彼らは我先に玄関まで飛んできて、今日の出来事を矢継ぎ早に語ってくれた。「大きくなったら何になりたい?」って聞くと、「ゴミ清掃車の人!」って嬉しそうに答えてくれた。

子供のころは、これほどまでに無邪気に生きることを楽しんでいたのに、われわれはいつから人生に苦しみ始めるのだろうか。どこで本来の自分を見失うんだろう。現代社会の何が、われわれを迷子にさせるのだろう。


▶自分のエゴから目をそらさない訓練法

テクノロジーが加速度をつけて進化し始めた21世紀。われわれはますます忙しくなり、時間がますます細切れになっていく。この変化とは裏腹に、いやこの変化ゆえに、人々は自分の心の中を見つめ始めた。マインドフルネスが先端企業の間で広まり始めたのだ。(関連記事:米財界で禅が主流になった?教育、ビジネス、社会を変える「マインドフルネス革命」の兆し)

マインドフルネスは、禅や瞑想をベースにした心の整え方の手法。宗教色は一切なく、科学的な根拠がベースになっている。

経営学も、マインドフルネスを取り入れ始めた。経営者向けマインドフルネストレーニングの第一人者、米Claremont大学のJermy Hunter准教授は「経営学は、自分の外側にあるものをマネージすることばかりを教えてきた。しかし優れたリーダーは自分の内側をまずマネージできなければならないはず」と語る。

そこでHunter氏は、マインドフルネスをベースにした経営者向けトレーニングプログラムを開発した。といっても座禅を組むわけではない。教室の中で、それぞれの体験を語ってもらい、禅の考え方をベースに心の奥底まで見ていこうというプログラムだ。

思考が一人歩きしないように、目の前の事象に集中するプログラムや、何気ない日常の中から存在自体がありがたいモノを探し出すプログラム、自分の感情に注目し、その感情がどこから起こっているのかを徹底的に掘り下げるプログラムなど、「自分のエゴから目をそらすことを許さない厳しいプログラム内容だ」とHunter氏は言う。

そんな厳しい内容にもかかわらず、多くの経営者が受講を希望しているという。ある大手企業の経営者は片道3時間も運転して受講し続けた。くせのある人物として有名な経営者だった。目つきが悪く、すぐにカッとなる。教授たちはみな、彼のことを怖がっていた。

この経営者はクラスの一番前に座った。最初のころは、ほとんど口を開かなかったという。しかし日を重ねるにつれ、彼は少しずつ自分のことを語り始めた。彼によると、メールが毎日、洪水のように押し寄せてくるのだという。決断しないといけないことが次から次へとやってくる。幾つものプロジェクトを同時並行で進めなければならない毎日に、彼は押しつぶされそうになるのだと言う。「売り上げを伸ばさなければならない」「利益を挙げなければならない」。こうしたフレーズが、まるで呪文のように頭のなかで繰り返される。そのプレッシャーとストレスから逃れられない生活なのだという。

そうして心を少しずつ開いていく中で、この経営者はあるときポツリと語った。「変な話だけど、被害者を演じることを、実は楽しんでいるのかもしれないな」。


▶「結婚したいと思ったあなたに戻ってくれた」

大変な気付きだった。普通の人にとっては、何気ない一言かもしれない。しかし、よろいかぶとに身を包み、戦い続けてきた企業戦士が、隠し続けてきた自分の心に気づいた瞬間だった。よろいかぶとの奥にある、本当の自分にアクセスできた瞬間だった。ここから彼は急速に変化し始めた。

その後もトレーニングを続ける中で、彼は自分自身がいかに凝り固まっているのか、他人に心を閉ざしているのかに気付き始めた。彼の経営のやり方は、怒りを爆発させて部下を恐れさせ、それで部下をコントロールするというものだった。強そうに見えて、実は自分自身のプライドや見栄、欲にとらわれている弱い存在であることに気がついた。弱い存在だからこそ、虚勢を張って強く見せる必要があったわけだ。

よろいかぶとを脱ぎ、自分の弱さをさらけ出し、隙を作ってみた。自分の弱さを受け入れてみた。その瞬間は、非常に怖く感じる。自分が小さな存在に感じる。

しかししばらくすると、内面から強さが湧き出てくる。自分の本来の強さが解き放たれる。この経営者は、本来の自分が持つ強さと自由を感じることができたという。「思いやりが何であるのかが、ひょっとすると分かりかけてきたかもしれない」。彼はそう語った。強い人間でなければ、他人に対し思いやりを持てない。虚勢ではない。彼の本来の強さが前に出始めたわけだ。

カリキュラムが終わりに近づいたころには、やさしい眼差しになり、少しは微笑むようにさえなった。Hunter氏はこの経営者に、私生活に何か変化があったかどうかを聞いてみた。彼はこう答えた。「私生活?もう35年以上も、私生活なんてものがなかったことに気づいたよ」。

彼自身も昔は、米国のヒッピー文化の影響を受けた一人だった。愛と自由と平和を求めていた若者だった。ところが結婚し、子供ができ、家庭を守るために仕事をし、仕事に没頭した。家族を守れなくなる状況を恐れ、その恐れを忘れるために仕事に力を入れ、成功すると少しは強くなったように感じた。それでも心の奥にある恐れはなくなっていなかった。それどころか成功すればするほど、自分の心を見失い人間関係が希薄になり、恐れはますます大きなっていった。さらに仕事に没頭した。さらに恐れは大きくなった。負のスパイラルだった。

ところがマインドフルネスのトレーニングで、スパイラルが逆方向に戻り始めたのである。話しながら、彼は号泣し始めた。「ワイフに言われたんだ。何があったのかは知らないけれど、結婚したときのあなたにやっと戻ってくれたって」。

われわれはみな、多かれ少なかれ、彼のように本来の自分からかけ離れた存在になっている。今後、ウエアラブルコンピューターで身を包むようになれば、われわれの意識はより分散され、注意力はより散漫になる恐れがある。ますます自分を見失う人が増えるだろう。

頭のよさでは、まもなくわれわれ人間は人工知能を搭載するロボットに負けてしまうことだろう。ロボットより優れたところがわれわれに残っているとすれば、それは心だ。今こそ、心を整えなければならない時代に入ってきているのだと思う。

未来社会は、正しい心がテクノロジーを駆使することで形成されていく。いや、そういう形で未来社会を作っていきたいと思う。

TED 未来の変え方 Jeremy Hunter氏
http://jeremyhunter.net/speaking/







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