ポピュリズムをポジティブに捉える。それは民主主義のひとつの過程だ 佐々木俊尚の未来地図レポート vol.441

ポピュリズムをポジティブに捉える。それは民主主義のひとつの過程だ 佐々木俊尚の未来地図レポート vol.441

2017年03月27日発行

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佐々木俊尚の未来地図レポート     2017.3.27 Vol.441
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【今週のコンテンツ】

特集
ポピュリズムをポジティブに捉える。それは民主主義のひとつの過程だ
〜『ポピュリズムとは何か』の水島治郎さんと対談した(前編)

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■特集
ポピュリズムをポジティブに捉える。それは民主主義のひとつの過程だ
〜『ポピュリズムとは何か』の水島治郎さんと対談した(前編)
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千葉大学の水島治郎さんと、月刊誌「潮」で対談いたしました。水島さんは以下の非常に刺激的な本を出された研究者です。



◆『ポピュリズムとは何か – 民主主義の敵か、改革の希望か』

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 水島さんはもともとはオランダ政治の専門家で、『反転する福祉国家』という非常に秀逸な本も書かれています。高福祉国家であるオランダでなぜ、イスラム排斥が生まれたのかというこの本については、私の前著『21世紀の自由論』でもかなり引用させていただきました。



 さて『ポピュリズムとは何か』では、非常に重要な命題が掲げられています。「はじめに」から引用しましょう。



 ”ポピュリズムとはデモクラシーに内在する矛盾を端的に示すものではないか、ということである。なぜなら、本書で示すように、現代デモクラシーを支える「リベラル」な価値、「デモクラシー」の原理を突きつめれば突きつめるほど、それは結果として、ポピュリズムを正統化することになるからである。”


 この問題意識のもとに、同書ではラテンアメリカの解放の論理や、ヨーロッパにおける極右政党の進出、イギリスのEU離脱、そしてご存じトランプ当選などが順を追って解説、分析されています。


 私は以前から欧州におけるポピュリズムの拡大についてひとつ疑問に思っていることがありました。それは、北欧や西欧など比較的富裕な国々では反イスラム的な極右ポピュリズムが中心なのにくらべ、なぜスペインやイタリア、ギリシャなどの南欧やラテンアメリカでは左翼ポピュリズムの力が強いのだろうか?ということです。これについて、本書には明確に答が書いてありました。



 どういうことかというと、南欧やラテンアメリカでは圧倒的な社会的不平等が前提としてあり、一部のエリートが政治も独占していた。つまり政治エリートと社会経済エリートが一致しているということです。だから政治変革を求める運動は、分配を志向する左派的な傾向を持たざるをえない。



 ところが西欧については、まったく様相が異なっているというのです。引用しましょう。



 ”公的セクターが充実し、福祉国家が発達して再分配が進められた西欧においては、ラテンアメリカに見るような圧倒的な貧富の格差があるとはいえない。むしろ公的部門の発達した西欧福祉国家の場合、近年そこで批判にさらされているのは、まさにその公的部門により「便益」を享受しているとされる人びとである。具体的には、生活保護受給者、公務員、福祉給付の対象となりやすい移民・難民などが批判のターゲットとなる。つまり、国家による再分配の「受益者層」が、「特権層」と規定されているのである。”


 ”この「新しい特権層」の存在、そしてそれを許容し、自らも甘い汁を吸う既成の政治家こそが、ポピュリズム政党の恰好のターゲットである。ヨーロッパのポピュリズム政党は、ラテンアメリカにおけるように富裕層を批判して「分配」を求めるのではなく、むしろ既存の制度による「再分配」によって保護された層を「特権層」と見なし、その「特権層」を引きずり下ろすことを訴えるのである(いわゆる「引き下げデモクラシー」)。この点は、近年の日本における「生活保護」批判のロジックとよく似ている。”


 非常に明快な解説です。さらに水島さんは、ラテンアメリカのポピュリズムがたぶんに経済的な問題であるのに対し、西欧のそれは文化的な問題であると指摘されています。



 さて水島さんは、最終章でポピュリズムの三つの重要な論点を提示されています。



 まず第一に、西欧型のポピュリズムは、リベラルやデモクラシーという普遍的な価値を承認し、それをうまく援用して排除の...

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