ポピュリズムは民主主義を新たに民主化する「デモクラタイジング・デモクラシー」である 佐々木俊尚の未来地図レポート vol.442

ポピュリズムは民主主義を新たに民主化する「デモクラタイジング・デモクラシー」である 佐々木俊尚の未来地図レポート vol.442

2017年04月03日発行

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佐々木俊尚の未来地図レポート     2017.4.3 Vol.442
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特集


ポピュリズムは民主主義を新たに民主化する「デモクラタイジング・デモクラシー」である
〜『ポピュリズムとは何か』の水島治郎さんと対談した(後編)

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■特集


ポピュリズムは民主主義を新たに民主化する「デモクラタイジング・デモクラシー」である
〜『ポピュリズムとは何か』の水島治郎さんと対談した(後編)
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 千葉大学の水島治郎さんと、月刊誌「潮」で対談いたしました。水島さんは以下の非常に刺激的な本を出された研究者です。


◆『ポピュリズムとは何か – 民主主義の敵か、改革の希望か』

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 前回は水島さんのこの著書から、ポピュリズムというものが再定義されるべきであるという話を書きました。それは民主主義の機能不全なのではなく、ある種の安全弁であり、次の段階へと民主制が進むための「段階」であると捉えるべきだということです。



 このあたりについて私は対談で「日本ではポピュリズムは大衆迎合主義と訳され、『悪いものだ』『民主主義に対する脅威だ』という安易なレッテル貼りがなされてきた面がありますね。水島さんの本はそうではなく、ポピュリズムのプラス面にも光が当てられています」と問うたところ、水島さんは次のように語られていました。


 「悪いレッテルを貼ると、そこで議論が停止してしまいますからね。ポピュリズムには、たしかに危険な面もあります。しかし、たとえばラテンアメリカでは、ポピュリズムがさまざまな政治的革新をもたらしました。『エリート主導の政治ではできなかったことを、ポピュリズムが可能にする』という側面もあるのです。大切なのは、ポピュリズムの可能性と危険性の両面を、しっかり見極めることだと思います」



 ここでひとつ、問題意識として提起されてくるのは「なぜ日本はポピュリズム化していないのか?」ということ。まあ左派には「安倍政権はポピュリズム!」と怒る人もいるかもしれませんが、安倍政権の政策は右派的な心情をたぶんに含んではいるとはいうものの(教育勅語をめぐる議論など)、政策全体にはポピュリズム的な要素は強くはありません。ポピュリズムに典型的な、排外的で敵対的な要素が少ないからです。その意味では、水島さんが著書の中で書かれているように、大阪市長時代の橋下徹さんがポピュリズム政治に最も近かったと言えるでしょう。



 佐々木「水島さんの本を読みながら、僕は日本のことを考えていました。日本にはまだ欧米に比べればポピュリズムが大きく台頭していませんが、その理由としては、移民がほとんどいないことが一つ。あとは、格差・貧困化が欧米と違う形で表れている点があるのだと思います。たとえばアメリカの場合、1パーセントの超富裕層が国の富の90パーセント以上を独占し、中流層がすごい勢いで貧困化しています。その点、日本の中流層はそこまで転落していないし、一方で超富裕層もそんなにいない。そのため、『移民対自国民』とか、『超富裕層対庶民』などという対立構造が顕在化しにくい。それが、日本があまりポピュリズム化していない背景にあるのではないでしょうか」


 これに対して、水島さんの返答はこうでした。
「おっしゃるとおりです。昨年、アメリカとイギリスでポピュリズムの嵐が吹き荒れるブレグジットとトランプ大統領誕生が相次ぎました。これは偶然ではない。グローバル化の最前線だからこそ、その影の面も出てきてしまったのだと思います。その点、日本は国内市場が縮小しながらもまだそこそこ元気だし、グローバル化に晒されていると言っても、首都東京でさえ街を行き交う人に外国人はまだまだ少ない。良くも悪くも、日本は世界のグローバル化に一歩遅れているわけです。だからこそ、グローバル化や大都市と地方の格差を背景としたポピュリズムは、まだ勢いを持ちにくい」



 ヨーロッパにおけるポピュリズムは当初、「反移民」というよりは「反規制」だったと水島さんは言います。これが第一段階でした。ガチガチの規制をもっと緩やかにしようという動きが、無党派層に支持されたのです。しかし1990年代以降、この運動が「反移民」に活路を見出すよう...

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