マシーンラーニングが何を発見しているのかを、人間はすぐに理解できない 佐々木俊尚の未来地図レポート vol.443

マシーンラーニングが何を発見しているのかを、人間はすぐに理解できない 佐々木俊尚の未来地図レポート vol.443

2017年04月10日発行

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佐々木俊尚の未来地図レポート     2017.4.10 Vol.443
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【今週のコンテンツ】

特集
マシーンラーニングが何を発見しているのかを、人間はすぐに理解できない
〜AIの時代に、人間社会を構成する「物語」はどう変わるのか(前編)

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■特集

マシーンラーニングが何を発見しているのかを、人間はすぐに理解できない
〜AIの時代に、人間社会を構成する「物語」はどう変わるのか(前編)
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 「ワイアード」誌の初代編集長だったケヴィン・ケリーは、日本でも話題になった近著『<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則』(NHK出版)で、AI(人口知能)についてこう書いています。



 「これからの10年であなたが直接間接問わず使うAIの99%は、まるでオタクのように狭小で超有能な専門家のようなものになるだろう」


 「実際には、もし『知能』という言葉でわれわれが意味するものが、奇妙な自意識だったり、ぐるぐると回り続ける内省だったり、自意識のぐちゃぐちゃな渦だとするならば、健全な知能とはつまり、責任能力を持つものなのかもしれない。しかしもし自分の車が自動運転をするなら、ガレージと口論したことを気にするといった人間的な感情に囚われずに、道路の状態に集中してほしい。病院にいる人工のワトソン先生には診断に集中してもらって、本当は金融の専門家になればよかった、などとは決して悩んでほしくない。われわれがほしいのは、自意識を持つAIより、人工的な賢さだ。われわれは進化するAIに自意識が生じないように設計すべきなのかもしれない。最も高価なAIサービスは、自意識がないことを売りにすることになりそうだ」



 「非人間的な知能は、欠陥(バグ)というより特徴だ。思考するマシンで最も重要なことは、それらが人間とは違う発想をすることなのだ」



 このケヴィン・ケリーの考えは、「人間の知能こそが最高の知能である」という一神教的な歴史的概念を破壊するところからスタートしています。彼はこうも書いています。「われわれの知能は知能の集合体であって、この宇宙に存在する多くの種類の知能や意識の中の小さな一角を占めているに過ぎない」



 AIは知能ですが、人間の知能とはまったく異なるアプローチの知能です。人間にできることができなかったりしますが、逆に人間のできないこともできます。たとえば何十万枚、何百万枚もの写真データから、同じ種類のデータをフィルタリングして瞬時に抽出するというようなことは、人間にはできません。ディープマインド社のAIプログラム「アルファ碁」の囲碁の戦略は、人間の推測の範囲を超えています。



 AIの論理というのは、機械学習(マシーンラーニング)とそこから発展した深層学習(ディープラーニング)によって成り立っています。この論理を理解するのはなかなか難しいのですが、「人の顔を認識する」という課題でわかりやすく考えてみましょう。



 私たちは、人間の顔をどのように認識しているのでしょうか?

 「人間の生き物の頭部にあって、肌色をしていて、目と鼻と口と耳があるもの」などというように概念的に理解しているのではないかと思います。こういう理解を、「ルールベース」という言い方をします。「人間の頭部にあること」「肌色をしていること」「目と鼻と口と耳がある」などのルールを設定して、そのルールに当てはまっているかどうかを調べていくからです。



 ルールベースは、AIは苦手です。ルールだとどうしても例外が出てきてしまいますし、そもそもルール自体を覚えるということが難しいからです。だからルールベースでAIを開発しようという手法は、1990年代に壁にぶつかってしまいました。そこで出てきたのが、マシーンラーニングです。これはルールとかは作らずに、とにかく当てはまるもの・当てはまらないものの見本を大量にどんどんAIに見せて上げましょうというものです。実に「機械的」なのです。


 先ほどの人の顔の理解で言うと、写真をたくさん用意して、人の顔の写真には「人の顔」というタグをつけて、それ以外の写真にはタグをつけない。それらを大量にAIに見せてやると、いつの間にか未整理のタグのまだついていない写真でも「...

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