長野・川上村のレタス農家が、平均年収2500万円を実現した理由 佐々木俊尚の未来地図レポート vol.444

長野・川上村のレタス農家が、平均年収2500万円を実現した理由 佐々木俊尚の未来地図レポート vol.444

2017年04月17日発行

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佐々木俊尚の未来地図レポート     2017.4.17 Vol.444
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【今週のコンテンツ】

特集
長野・川上村のレタス農家が、平均年収2500万円を実現した理由
〜シェアリングエコノミーは農村地帯に可能性を見いだせるだろうか?

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■特集
長野・川上村のレタス農家が、平均年収2500万円を実現した理由
〜シェアリングエコノミーは農村地帯に可能性を見いだせるだろうか?
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 前回は「AI(人工知能)の時代に、人間社会を構成する「物語」はどう変わるのか」の前編をお届けしました。今週はその後編を配信するつもりだったのですが、先週末の9日に長野県川上村を訪問して取材し、その話がたいへん面白かったので、新鮮なうちにこちらの話を先行してお届けしようと思います。AIの後編は来週にまわしますね。

 川上村というのは、長野県の東のはしっこにあって、ちょうど八ヶ岳と奥秩父にはさまれた狭い山あいの土地です。日本で一番長い川・信濃川の上流の千曲川、その千曲川の最上流の土地でもあります。でもこういう地理的な説明よりも、レタス農業で栄えて農家の平均年収が2500万円もある裕福な村であるということのほうが有名でしょう。

 この年収の高さに加えて、いっときは外国人技能実習生に対するブラック労働で悪名が轟いたこともあります。きっかけは2014年、毎年数百人の中国人技能実習生を受け入れていた村の協同組合に、日弁連が「人権侵害があった」と改善を勧告したことでした。日弁連の報告によると、長時間の激務や残業代の過小計算、劣悪な住環境などが放置されていたようです。

 これはこれで非常に重要な問題で、先日も以下のような記事が西日本新聞に掲載されていました。

◆移民問題、日本も当事者 年間34万人、世界第5位
http://bit.ly/2nY91d4

 日本は移民を受け入れていないと言われていますが、実は「外国人流入数」という統計を取ると、ドイツ、米国、英国、韓国に次ぐ規模で年間34万も流入しており、世界第5位なのだそうです。実は留学生や技能実習生の肩書で呼び込んだアジアの若者たちに、低賃金の単純労働を担わせていて、これが移民と同じ役割を果たすにいたっているという現実があるのですね。なんだ、本当は移民大国だったんじゃないか!ということです。

 こういう背景で、川上村のレタス農家も「外国人のブラック労働で年収2500万円も儲けてる」とさんざん叩かれたわけです。川上村は人口4000人で、外国人実習生は950人。人口の約2割にも達しています。この事件以降、村の実習生受け入れ窓口になっていた協同組合は解散しました。村役場の関係者に聞くと「実際、指摘されたような問題はあったのは事実ですが、一部の農家のことだったと認識しています。大半の農家はきちんと受け入れをしていたのですが……。逆に協同組合が解散してしまったことで、さまざまな雑多な業者が実習生受け入れに参入するようになり、その混乱の方がいまは問題だと言えるかもしれません」という話でした。

 さて、川上村の収入の大きさは、必ずしも外国人労働に依拠していることだけが要因ではありません。

 標高が1000メートルほどもある川上村はたいへん冷涼な土地で、夏場でも最高気温は20度を下回っています。冬場はマイナス15度になる日がめずらしくありません。ですから米農家が中心だった明治時代ごろまでは、貧しい寒村でした。一年を通して畑仕事を頑張っても、家族が2か月食べるだけの食料を確保するのが精一杯で、外に出荷することさえできなかったのです。

 転機は戦後まもないころに訪れました。アメリカからやってきた進駐軍は、日ごろ食べ慣れていたシーザーサラダのレタスを日本で調達しようとしましたが、当時は日本ではレタスはほとんど作られていませんでした。そこで進駐軍は、レタス栽培に適した場所を調査。その結果、冷涼な川上村が栽培指定地に選ばれたのです。

 これが大当たりでした。進駐軍が撤収して日本が独立してからも、高度経済成長の波にのって日本の食は欧米化し、家庭の食卓にサラダがのせられるようになります。レタスの消費量はぐんぐん伸びて、いまでは日本人ひとりあたり年間1.8キロにまで達してい...

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