Vol.191 大学問題にまつわるガセネタを糾弾しつつ、山口某氏準強姦騒ぎやAmazon詐欺事件が抱える問題の核心に触れてみる回

Vol.191 大学問題にまつわるガセネタを糾弾しつつ、山口某氏準強姦騒ぎやAmazon詐欺事件が抱える問題の核心に触れてみる回

2017年05月31日発行

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┃人間迷路┃Vol.191
--大学問題にまつわるガセネタを糾弾しつつ、山口某氏準強姦騒ぎやAmazon詐欺
事件が抱える問題の核心に触れてみる回
                           やまもといちろう
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                         2017年5月31日発行
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【0.序文】学術系の話で出鱈目が出回りやすい理由
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 以前ご一緒していた東京大学の研究室絡みで、興味深いけど見事なガセネタが
回ってきて、肩をすくめたり苦笑したりしていた事案が先週ありました。インタ
ビューの体裁になっていまして、語っているのはワークスアプリケーションズと
いうソフト会社の牧野正幸さんという社長さんです。

東大の学費を5倍に 「考える若者」育てる奥の手
http://style.nikkei.com/article/DGXMZO16175930Q7A510C1000000

 むろん、この内容自体は言われるまでもなくガセネタなので、当事者はみんな
分かっているし、学費を5倍にするかどうかを真剣に議論されたことなどありま
せん。一種の与太話なので、通常ははいはいありがとうございました、という話
で済まされるのが通常です。

 大学での教育環境については、すでに国際比較は行われていますし、コンセン
サスも一応はあるわけですね。少なくとも、この牧野さんの語る「欧米の大学で
できることが、日本ではなぜできないのか。先生の数が圧倒的に足りないからで
す。私の感覚では、日本の大学の教師対生徒の比率は、海外のトップレベルの大
学の5分の1です」はまったくの嘘です。

「大学における大学生・教員数比率の国際比較」
http://k2.sci.u-toyama.ac.jp/career/data/Report_Edu_201001.pdf
大学の学生・教職員数比率の国際比較調査から見えてきたもの
http://k2.sci.u-toyama.ac.jp/career/event/symp09S_Tsutsui.pdf

 ところが、記事を鵜呑みにした読者らしき人たちから、ある種の誹謗中傷のよ
うなものが出始めます。概ねこの牧野さんの主張に沿った内容なので、影響をさ
れたのだろうと思うわけですけれども、わざわざ封書でこの問題についての見解
を求める、というような連絡を寄越してきた人もいるようです。もちろん、義憤
に駆られて善処を求めたいということなんだと思うのですが、一方で、もう少し
調べてからくればいいのにと思うこともたくさんあります。

 他の国の大学と日本の大学とで問題視されるべきところでいうと、産学研究を
わずかながら手掛ける私でさえ気づくところは「研究予算」と「教授・准教授の
人件費の安さ」に尽きます。文科行政の伝統的な問題かもしれませんが、海外で
それなりのクラスの研究をしている人を大学に呼んできてポストに就けようとな
ると、やはり10万ドルから40万ドルぐらいの報酬を払わないとそもそも来てくれ
ません。日本で順調に出世コースを歩んでいる教授でも8万ドルぐらいの報酬し
か得ていないことを考えると、日本の大学の教授会などで「海外からこの教授を
これだけの報酬で呼びましょう」と建議されたとき「俺でさえ700万円ぐらいし
かもらっていないのに」みたいな空気になるのは仕方のないことだと思うので
す。

 教員に対するサラリーもこうである以上、研究と指導を両面で行わなければな
らない大学の教員は、これといった事務のサポートも得られないまま、また研究
発表をお金に換えるための営業もなかなか手が回らないよということになりま
す。その意味では、牧野さんのいう「欧米のトップレベルの大学の5分の1」とい
うのは事務作業を補助する要員という観点になるんじゃないかと思ったりもしま
す。教授に雑務が多すぎるのでしょう。書類仕事に追われたり、大学入試で駆り
出されたりすることで、本来必要な研究に充てられる時間や、学部生たちを素晴
らしいカリキュラムで指導する時間が損なわれているようであれば本末転倒で
す。

 その一方で、大学全入時代とまで言われ、大学進学率が5割近い状況になって
くると、少子化に転じたいま大学の統廃合はかなり積極的にやっていかない限り
日本の科学研究は手遅れになります。言い方は悪いですが、良い大学も悪い大学
も、良い教員も悪い教員もすべて文部科学省の方針では温存になってしまうの
で、限られた科学技術予算が薄く広く分配され、本来ならば有望な研究に携わる
教員には分厚くされるべき予算が「企業との共同研究を取りにいかなければ研究
プロジェクト自体を組成できない」羽目になります。

 これは、予算のつけやすい薬学・医療や半導体、通信、素材といった分野はあ
る程度企業側の“手盛り”は成立する世界ですが、逆に法律、人文、教育、政治
過程、コミュニケーションといった分野はフィールドワークをやる予算さえもつ
きませんし、共同研究してくれる企業自体が限られるために身動きが取れなくな
っていきます。文字通り、文系の貧乏教授はこれといった学識や実績を上げるこ
とがどんどんむつかしくなっていきます。机上で低予算の論文を仕上げることが
一番のインセンティブとなると、どんどん国際標準の研究から遠ざかってしま
い、結果として現場で実地の事例に携わる優秀な弁護士や政治家秘書のほうがよ
ほど知見を持っていたりする分野が出てきてしまうわけです。

 本来ならば、そういう問題を解決するために長い目線で文部科学省が方針を決
めてどうにかしていかなければならないところが、政治家自体が今回の加計学園
でどういうわけか前川喜平元事務次官の下半身問題になってしまって、いや、そ
うじゃねえだろという気持ちにさせられるわけであります。それよりも、実態に
沿った大学教育の在り方を考えましょうという前向きな話になってほしいなあと
思いながら、我が子が直面する大学入試改革の要綱を眺める毎日です。


◆最近の書き物

日本のWEBサービスは、穴だらけである。連載第二回 山本一郎(個人投資家・作
家)
http://workswitch-ibs.inte.co.jp/yamamoto_002/

「やったもん勝ち」ネット業界のイノベーションが世間を犯罪まみれにするまで
http://bunshun.jp/articles/-/2385
オタクがオタクでなくなるとき
http://bunshun.jp/articles/-/2475
「負け組」50代の漂流
http://bunshun.jp/articles/-/2546
眼を瞑って、そう、大きく、大きく息を吐くのよ
http://bunshun.jp/articles/-/2619

菊川怜の結婚を番組関係者が喜ぶと”ハラスメント”になるのか?|やまもとい
ちろうコラム
http://dailynewsonline.jp/article/1305568/
若きフランス新大統領選出、25歳年上女性”略奪婚”を巡る是非|やまもといち
ろうコラム
http://dailynewsonline.jp/article/1308789/
香山リカ女史への名誉棄損話にまつわるエトセトラ|やまもといちろうコラム
http://dailynewsonline.jp/article/1312519/
世紀のスクープか第二の永田メールか?加計学園騒動の行方|やまもといちろう
コラム
http://dailynewsonline.jp/article/1314416/
築地市場の”汚染状況発覚”で都議会選挙の混迷に拍車|やまもといちろうコラ

http://dailynewsonline.jp/article/1315013/

最高品質にして贅沢な作りのテンプレ。深淵なる名作『ブラックローズサスペク
ツ』【山本一郎のスマホ情報見聞録】
https://gamedeets.com/archives/265720
名作『城とドラゴン』、マジで「なぜ今までやってなかったのか」と後悔するレ
ベル
https://gamedeets.com/archives/272714

人はなぜ介護で自殺するのか?超高齢社会に潜む闇にあるのは、切っても切り離
せない、老いと自殺の相関関係
https://www.minnanokaigo.com/news/yamamoto/lesson17/

急成長「メルカリ」にはどんな法的リスクがあるか
http://president.jp/articles/-/21015

やまもといちろう 無縫地帯(Yahoo! JAPANニュース個人)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yamamotoichiro/
やまもといちろう オフィシャルブログ
http://lineblog.me/yamamotoichiro/

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目次
【0. 序文】学術系の話で出鱈目が出回りやすい理由
【1. インシデント1】「忖度」安倍政権、山口敬之さんレイプ話のしょうもない
展開
【2. インシデント2】Amazonは詐欺事案続出と対応の不備を問う声にどうこたえ
るか
【3. インシデント3】ネットサービスの一般化がもたらす混乱と軋轢
【4. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A
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