Vol.192 前川前文科次官のあれこれについて思うこと、人工知能ビジネスがいまいちな理由、そしてビッグデータ独占防止の話など

Vol.192 前川前文科次官のあれこれについて思うこと、人工知能ビジネスがいまいちな理由、そしてビッグデータ独占防止の話など

2017年06月12日発行

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┃人間迷路┃Vol.192
--前川前文科次官のあれこれについて思うこと、人工知能ビジネスがいまいちな
理由、そしてビッグデータ独占防止の話など
                           やまもといちろう
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                         2016年6月12日発行
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【0.序文】前川喜平という文部科学省前事務次官奇譚
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 昨今騒ぎが拡大している前川喜平さんの「怪文書」なのか「内部文書」なのか
判然としないところはありますが、この前川喜平さんについてはいろんな風聞が
ありまして、文春も新潮もかなり頑張って取材して誌面を割いて頑張っているん
ですけれども。

 大資産家の一族であり、中曽根家の流れであることも含めて、バックグラウン
ドについてはいろんな人がいろんなことを書いておられますので是非そこは流し
読みでもしていただくとして、私が本稿で書いておきたいのは「優れた人」「奥
の深い教養人」とされる高評価と、「だらしのない人」「日本の文科行政を駄目
にしている張本人の一人」という酷評とが併存するという、実に奥の深い人物だ
ということです。

 前者で言いますと、前川さんとかかわりの深かった大学関係者は、大学改革に
対する前川さんの姿勢や、昨今問題となっている奨学金問題について前川さんが
非常にリベラルで筋の通った議論を続けてきたことを評価します。まあ、個別政
策を語らせると前川さんという人は実に優秀で素晴らしい実力者で、人情味の篤
い人物だということになります。

 私個人で言いますと、いわゆる天下り論争のときに何度かご一緒しただけです
が、記者会見でもあった通り、まあ飄々とした感じの方でした。悪い印象は特に
なく、役人らしい人だな、という感覚しかありません。

 で、菅義偉官房長官との関係で申し上げるならば、官邸としては面倒な人とい
うポジションです。これは伝え聞く限りですが、天下り問題が出る前に、事務次
官になったのは16年6月、この時点でこの人事について官邸でいろいろとゴタゴ
タしていたとのことで、何しろ前川さんご自身が初等中等教育の畑であるために
大学入試改革の問題については一家言どころではない私見を持っている人なわけ
です。

 ところが、官邸からはご存知のように文科省天下り問題の露顕の詰め腹を切ら
され、最後は退官後に処分までされてしまい、蓋をされます。前川さんからすれ
ば忸怩たるところでしょう。吏道たるものは、為政者の都合で柳のように揺れ、
また切られるべきときは潔く切られることを覚悟してこそ、というところもある
のかもしれませんが、そういう詰め腹を切っても退職後に相応の厚い手当てがあ
るからこそやむない事情で責任を負って辞めていく際の心の折り合いがつくの
に、退職後も馬鹿だクズだと言われるのは… というのはあったのでしょう。

 官邸からすれば文字通り今回の経緯は裏切り者の際たるものですし、いい加減
にしろということで頭に血が上ったところはあるでしょうが、前川さんに対して
怒っているもう一つの勢力があります。大学当局です。

 どことはいいませんが、前川さんに煮え湯を飲まされた大学当局者はかなり横
のつながりをもっていて、前川さんが事務次官になる前から、天下り人事の問題
について官邸やマスコミに情報提供をしてきた有力者の皆さんがおりまして、ど
ちらにも相応の言い分はあるにせよ、前川さんの大学教育の現状に対する無理解
と、文科省の文教行政に対する度し難い無謬性と、さらには科研費の在り方を巡
る問題の見て見ぬふりが「完全な機能不全を起こした戦犯が前川」とまで言わし
める状況になるわけです。

 第三者的に見ると、私なんかは前川さんというのは文科省という秩序のベルト
コンベアーの上をコトコト流れてきた風変わりなおじさん以上のモノではありま
せん。悠々自適のバックグラウンドと、本人にはそれほどない野心、文科省らし
い慎重な姿勢とどうでも良さげな雰囲気は典型的な文科省の大物役人、といった
風情です。

 しかしながら、前川さんというのはどういうわけか、詰め腹を切らされた後
唯々諾々と隠居することなく、手持ちの火薬を掲げてメディアに持ち込みまくる
のです。それこそ、日本テレビを筆頭に毎日新聞、東京新聞といった各種政権批
判も辞さないマスコミに取り上げてもらうよう依頼したものの、実際にネタとし
ていろいろとアレであったところを具体的に紙面に、それも一面にしたのが朝日
新聞ただ一社だったということになります。特ダネでもなんでもなく、単に「そ
の証言一本ではとても危なくて紙面や放送で使えない」と判断されるべきもの
が、ある種の前川さん一流のそれっぽさで官邸のスキャンダルにまで持ち込めた
というのが実情です。

 私も、加計学園の問題については森友学園問題が燃えている最中にこっちのほ
うが問題だと思っておったわけですが、それはごく単純に、前川文書のような単
品ネタではなくお友達行政の延長線上にあるものとみていたわけです。一緒に首
相と視察する三流学校オーナーとか、まああり得ないわけじゃないですか。一
方、某大手マンモス大学のように理事長以下、施設・校舎建設で暴力団とズブズ
ブになっているところに比べれば、加計学園の云々というのはくだらない話であ
って、それほど大きなネタになるとは思っていませんでした。

 実際に蓋を開けてみると、菅官房長官が過去の経緯もあって感情的になって記
者会見で怪文書だと言い切ったり、前川さんのことを「地位に恋々としてこだわ
っている俗物」みたいな人格攻撃をし始めたため、明らかに初動を間違ってカロ
リー高く黒煙が上がってしまった、という事例になっています。

 私は、これは官邸側のある種の弛みというか、油断なんだろうと思っていま
す。加計学園を優遇すること自体は特段のあれこれはないでしょうし、2014年に
同行した視察でいまさら問題にされるような疚しいことは特にない、と事務的に
処理していれば何事も起きなかったはずが、大物なのにトリックスター風に動く
前川さんの風俗通い話などを読売新聞に書かせてしまえばそれは野火のように文
春や新潮にネタが広がっていくに決まっています。特区制度というものがどうい
う代物で、四国に獣医学部がなぜ必要で、だから推進したというところだけを語
っていれば、前川さんが前に出てくることもなくそのまま終息したのに、と思う
わけですね。

 その点で、その後出てきた山口敬之さんのレイプ揉み消しネタも含めて、火消
しのイマイチさというのは強く感じます。長く政権をやってきた弛みだとしか思
えませんし、今後もいくつか出てくる話があるでしょうから、本件で脇を締め直
してきちんとした政策議論に回帰してくれるよう願うのみです。こんな話で国会
期日消費するぐらいならば、社会保障についてもっと真剣に議論してほしいと切
に願う次第です。

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目次
【0. 序文】前川喜平という文部科学省前事務次官奇譚
【1. インシデント1】人工知能と広告の関係を科学する方向性が挫折を繰り返す
理由
【2. インシデント2】公取委がデータドリブンな時代到来を控えてアップを始め
たようです
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A
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