今秋公開のチェ・ゲバラ映画「エルネスト」に学ぶキューバの歴史 佐々木俊尚の未来地図レポート vol.458

今秋公開のチェ・ゲバラ映画「エルネスト」に学ぶキューバの歴史 佐々木俊尚の未来地図レポート vol.458

2017年07月24日発行

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佐々木俊尚の未来地図レポート     2017.7.24 Vol.458
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【今週のコンテンツ】

特集

今秋公開のチェ・ゲバラ映画「エルネスト」に学ぶキューバの歴史

〜〜過去との共時性と、他者への共鳴を考える(前編)

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■特集

今秋公開のチェ・ゲバラ映画「エルネスト」に学ぶキューバの歴史

〜〜過去との共時性と、他者への共鳴を考える(前編)
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 今回は、この秋公開される一本の映画を手がかりに、共時性と共鳴というテーマを考えてみたいと思います。


 「エルネスト」という日本映画が、10月6日に公開されます。本編の大半がスペイン語で舞台もキューバやボリビアなのですが、脚本・監督は「どついたるねん」「王手」などで知られる阪本順治さん。主演はオダギリ・ジョーさんです。



◆映画「エルネスト」公式サイト

http://www.ernesto.jp/


 どういう話かというと、端的に言えばキューバの革命英雄エルネスト・チェ・ゲバラの映画です。ただしタイトルの「エルネスト」はゲバラ本人を意味しているだけでなく、本作の主人公であるオダギリ・ジョー演じるエルネスト・フレディ前村の名前でもあるという、ダブルミーニングになっています。



 チェ・ゲバラはご存知のように、フィデル・カストロらとともに1959年のキューバ革命を成し遂げました。冷戦の最中に起きたキューバ革命は当初、資本主義陣営にも社会主義陣営にも与しない新しい体制を目指したのですが、米国がカリブ海のお膝元での革命を危険視し、徹底的にキューバ革命政府を潰そうとします。有名なピッグス湾事件がそうで、反革命勢力を糾合して米軍の支援のもとにキューバに再上陸させようとしたのですね。この侵攻は失敗に終わりましたが、キューバとアメリカの対立は激化し、この結果、カストロは革命政府の生き残りをかけてソ連に接近し、1961年には社会主義宣言し、ソ連との友好関係を明白にしていきました。



 この結果、引き起こされたのがキューバ危機。ソ連のミサイルがキューバに持ち込まれてアメリカを射程距離に入れ、これが核戦争の一歩手前という前代未聞の事態を引き起こしたのです。このキューバ危機は最終的に、ソ連のフルシチョフ書記長とケネディ大統領の対話によってなんとか回避されました。



 この一連の流れをチェ・ゲバラはどう見ていたのか。革命後、彼は工業大臣に就任しています。アメリカに封鎖され、キューバの経済は逼迫し、ゲバラはあれこれ奮闘しますが、なかなか経済は好転しません。さらにソ連に対しても反発の姿勢を強めていきます。そして決定的になったのが、1965年のアジア・アフリカ会議。



 アルジェリアで開かれたこの会議でゲバラは演説し、ソ連を帝国主義の搾取の共犯者と批判します。これがソ連の怒りを買って、ソ連はカストロに対して「ゲバラを政府の中核から外さないと、物資の援助はもうしない」と通告。仕方なくゲバラは工業大臣を辞任し、キューバを離れるのです。


 チェ・ゲバラは「革命の夢」を見続けようとしたのでしょう。彼が向かったのは、最初はコンゴ、ついでボリビアでした。コンゴでは革命運動を指揮しようとしたものの、反政府勢力の士気の低さにうまくいかず、いったんキューバに戻った後、ボリビアに向かうのです。ボリビアは1952年に革命が樹立しますが、1964年には軍事クーデターが起きて軍事独裁政権へと移行しています。



 ゲバラがボリビアに渡ったのは1966年、軍事クーデターの2年後でした。このボリビアでの革命運動の中でゲバラが出会ったのが、映画の主人公であるフレディ前村だったのです。


 フレディ前村は日系ボリビア人で、1941年生まれです。父親の前村純吉は鹿児島出身で、南米ではゴムブームで移民が儲けているという話を聞いて、1913年にペルー経由でボリビアに渡った人です。ゴム栽培がうまくいったのかどうかはわかりませんが、前村純吉は南米で成功し、息子のフレディも裕福な子供時代を送りました。



 しかし貧富の差が激しいボリビアで、彼は政治に関心を持つようになります。映画「エルネスト」の中でも、青春時代の主人公が近隣に住む貧しい友達を気遣うシーンが描かれています。フレディは自分の衣類や食...

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