チェ・ゲバラ、ピダハン、中世の宗教画。「いまそこにいる」という感覚  佐々木俊尚の未来地図レポート vol.459

チェ・ゲバラ、ピダハン、中世の宗教画。「いまそこにいる」という感覚 佐々木俊尚の未来地図レポート vol.459

2017年07月31日発行

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佐々木俊尚の未来地図レポート     2017.7.31 Vol.459
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【今週のコンテンツ】

特集
チェ・ゲバラ、ピダハン、中世の宗教画。「いまそこにいる」という感覚
〜〜過去との共時性と、他者への共鳴を考える(中編)

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■特集

チェ・ゲバラ、ピダハン、中世の宗教画。「いまそこにいる」という感覚
〜〜過去との共時性と、他者への共鳴を考える(中編)
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 前回に引き続き、この秋に公開される日本映画「エルネスト」の話です。この映画の主人公で、オダギリ・ジョーさん演じるフレディ前村は1967年、ボリビアのジャングルで政府軍に捕まりました。同士のゲリラの遺体の身元確認をするよう求められ、それは仲間を裏切ることになると拒否し、最終的に銃殺されます。まだ25歳でした。その2ヶ月後、ともにボリビアの反政府軍にいたチェ・ゲバラも政府軍に捕まって、殺害されました。39歳でした。



 チェ・ゲバラが神格化されるようになったのは、彼が亡くなってからです。ちょうど時代はベトナム戦争反対運動が盛り上がり、革命の運動が燃えつつあった1960年代末。革命を志した若者たちが好んでゲバラの図柄のTシャツを着るようになり、流行として広がって行ったのです。



 いまでもゲバラのTシャツは世界中で目にします。キューバを旅行すると、特に首都ハバナのような観光地ではそこら中にゲバラの図案を目にします。



 前回も書きましたが、キューバ革命は当初、アメリカの支配でなければソ連や中国の社会主義陣営でもない、独自の道を模索しました。しかしアメリカに経済封鎖され、生き残るためにリーダーのフィデル・カストロはソ連と接近し、それが核の悪夢を現実にしたキューバ危機を引き起こしました。ゲバラがキューバを出たのは、あまりにも革命政府がソ連と接近しすぎたことを嫌ったからです。

 とはいえソ連の支援があったからこそ、革命キューバは生き延びることができたということはあります。その支援によって経済成長を成し遂げ、1980年代には国民の生活も非常に豊かになりました。現地の人に聞いたのですが、このころは一般の国民であっても海外旅行をする余裕ができて、同じ共産圏だった東欧などに旅行に行く人が多かったと言います。



 しかし1990年代に入るとソ連は崩壊し、キューバは経済危機に陥ります。食料も配給制度になり、この時代の苦しみは筆舌に尽くしたがい状況だったそうです。この苦難の時代を経て、オバマ大統領時代の米国との和解もあって、いまは新しい観光地として世界中から人が押し寄せてきています。実際、今年初めに私がハバナに行った時も、中心部の観光地は信じられないぐらい外国人観光客であふれていました。ヘミングウェイが通っていたカフェなんて、外にまで人があふれ出して悲惨な状況に…。


 このキューバの現代史の中で、多くのことが起きてきて、でも人々はなんとかここまでたどり着いてきたという感じです。キューバはいまも貧困ですが、社会主義国として不平等はなく、他の共産圏のように官僚や軍人が労働貴族になることはありませんでした。それが原因で犯罪は少なく、夜のハバナの薄暗がりを歩いても、ほとんど危険はありません。そういう国なのです。キューバ人と話していると、何か一種の諦めの境地のようなものを感じることがあります。そういう諦めの感覚をはらみながら、キューバは1950年代の革命時代の空気をここまで残してきているのです。



 ハバナの街は、歴史と現在が同居しています。ハバナは西側の新市街と東側の旧市街に分かれるのですが、特に旧市街はどの建物もコロニアルスタイル(植民地様式)で、風情がたっぷりです。さらにこれも有名ですが、アメリカの経済封鎖のために新車の輸入ができず、1950年代の古いアメリカ車が今もたくさん走っています。おそらく3分の1ぐらいはそういう車でしょう。残りの半分ぐらいは、共産圏時代の名残で、ソ連のラーダ。残りの半分が、まあ新し目の普通の現代的な車。



 また外資系大手の広告看板を目にすることも滅多にありません。今や世界中のどこに行っても、コカコーラやサムスンがありますが、そういうものはハバナにはないのです。



 こういう風情を、ノスタルジックに「時間が止まっている」...

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