攻殻機動隊のテーマは、「記憶」から「つながり」へと変化した  佐々木俊尚の未来地図レポート vol.463

攻殻機動隊のテーマは、「記憶」から「つながり」へと変化した 佐々木俊尚の未来地図レポート vol.463

2017年08月28日発行

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佐々木俊尚の未来地図レポート     2017.8.28 Vol.463
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【今週のコンテンツ】

特集
攻殻機動隊のテーマは、「記憶」から「つながり」へと変化した
〜〜テクノロジ時代にも生存していく人間の本質とは(後編のその1)

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■特集
攻殻機動隊のテーマは、「記憶」から「つながり」へと変化した
〜〜テクノロジ時代にも生存していく人間の本質とは(後編のその1) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 アニメ「攻殻機動隊/ゴースト・イン・ザ・シェル」の1995年版、2004年の続編『イノセンス』、そして今年公開されたハリウッド版のリメイク実写版の3作品を比較することで、テクノロジと人間の関係性を考察するシリーズの第2回です。

 1995年版は、この記憶の揺らぎに対する喪失感が基調になっていると私は感じました。

 そこから10年近く経った2004年版の『イノセンス』はどうでしょうか。これは1995年版の続編という位置付けで、草薙素子がいなくなった後にその喪失感を抱えながら生きているバトーを主人公としています。ストーリーはいったんパスして、気になるバトーのセリフを引きましょう。

 「思い出を、その記憶と分かつものは何もない。そして、それがどちらであれ、それが理解されるのは常に、後になってからのことでしかない。主時間はセーブ不能だから辛いな。電脳化して外部と記憶を共有化した以上、必ず付いて回るツケだ。家で待ってる女房や娘が本当にいるかどうか。いやそもそも自分はいまだに独り者で、どっかの部屋で家族の夢を見ているんじゃないか」

 この作品では、1995年版と比べ、記憶こそが人間の本質であるという確信は薄らいでいます。では記憶ではなく、いったい人は何に依拠して、自分であることを確認するのか?ということがこの2004年の『イノセンス』では大きなテーマとして浮上して来ています。

 『イノセンス』では、少女の形をしたロボットが暴走して、所有者を惨殺するという事件が相次ぐというストーリーです。バトーたちはこのロボットのメーカーを洗い、実はこのロボットの正体が、人間の生身の少女のゴーストをコピーして作ったものであるということを突き止めます。ゴーストをコピーすると、元の人間の脳は破壊されてしまうため、法律で禁止されている行為です。では人間のゴーストがコピーされたロボットは、ロボットなのか、それとも人間なのか?

 映画の冒頭のところでバトーは、暴走したロボットが自壊する際に「タスケテ」とかすかにささやくのを聞きます。このささやきは、ロボットのささやきだったのか、それともコピーされたゴーストのささやきだったのか。おそらくは後者でしょう。映画の終盤、ロボットメーカーの本社に侵入したバトーは、ゴーストをコピーするために誘拐されて来た少女が閉じ込められた機械の中から、やはり「助けて」とささやくのを聞くのです。「タスケテ」と「助けて」はここでオーバーラップし、どちらも人間のゴーストの叫びであったことが明かされたということなのです。

 『イノセンス』では、バトーとロボットのゴーストとのコミュニケーションが重要な位置を占めています。ロボットメーカーから助け出した少女は、バトーに語ります。「ロボットが事故を起こせば、きっと誰かが気がついてくれるって。誰かが助けに来てくれるって」

 つまり社会に自分たちの被害を知らせるために、彼女たちは謀ってロボットを暴走させ、所有者を惨殺させていたのです。そう告白する少女に、バトーは怒りを押し殺した口調で言います。

「犠牲者が出ることは考えなかったのか。人間のことじゃねえ。魂を吹き込まれた人形がどうなるかは考えなかったのか!」 「だって‥だって‥。私は人形になりたくなかったんだもの!(激しく泣きだす)」

 バトーはここで、コピーされたゴーストを持つロボットたちに共鳴しているのです。

 1995年の前作のラストで、肉体を捨ててネットの海の中へと消えていった草薙素子は、このラストシーンでロボットの体を借り、再びバトーの前に現れています。バトーと少女のやりとりをそばで見ていた彼女は、こう言います。「『鳥の血に悲しめど、魚の血に悲しまず。声ある者は幸福なり』。人形たちにも声があれば、”...

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