懐かしい「人工無脳」は私たちを癒すことができたのだろうか?  佐々木俊尚の未来地図レポート vol.465

懐かしい「人工無脳」は私たちを癒すことができたのだろうか? 佐々木俊尚の未来地図レポート vol.465

2017年09月11日発行

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佐々木俊尚の未来地図レポート     2017.9.11 Vol.465
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特集

懐かしい「人工無脳」は私たちを癒すことができたのだろうか?
〜〜テクノロジ時代にも生存していく人間の本質とは(番外編)

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■特集


懐かしい「人工無脳」は私たちを癒すことができたのだろうか?
〜〜テクノロジ時代にも生存していく人間の本質とは(番外編)

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 前回まで続けて来た、「攻殻機動隊」に見るテクノロジー時代の人間の本質についてのお話。もう一回だけ、番外編を続けます。ちょっと難しい話が続いてしまっていますが、ご容赦を。次回のメルマガは、VRとARの未来という現実のテクノロジー分析の方に引き戻した話をお届けしたいと思っています。

さて、何年も前の話になりますが、「ツイッターでずっと仲良くしていた人がボットだった」という個人のブログ記事を読んだことがあります。確認してみると、2009年の記事ですね。


◆twitterでずっと仲良くしていた人がbotだった
http://d.hatena.ne.jp/coconutsfine/20090309/1236611519


 ボット(bot)はご存知のように自動プログラムで、ツイッターで使われているボットでは、あらかじめ溜めてある発言を定期的に発言するものもあれば、だれかのツイートに返信のかたちで発言するような手の込んだタイプもあります。



 このブロガーさんは、ツイッターにはまり、中でも二人の人物と頻繁にやりとりし、コミュニケーションを楽しんでいました。「家に帰ってきたよ」とツイートすると「お帰り」、目ざめれば「おはよう」と言ってくれる。このささやかなやりとりに癒やしを感じていたのです。



 ところがある日、このうちの一人がまったく同内容の発言を、脈絡なく繰り返していることに気づきます。そして二人ともがボットだったことに気づき、驚愕することになるのです。親友が実は人間ではなく、感情も意識も持たないロボットだったのです。なんという切ない話でしょうか。


 ボットは「なんちゃって人工知能」ではあります。昔、「人工無脳」なんていう言葉もありました。古くはELIZAとかRacterなどが有名ですが、テキストベースのチープなメモリとCPUのコンピュータの時代から、単に適当に返答を送り出しているだけなのに、まるで人間と会話しているかのように思わせてくれるプログラムです。50代より上ぐらいの古いコンピュータユーザーなら、若いころに楽しまれた記憶があるのでは。



 この人工無脳に関連して、アラン・チューリングが1950年に考えた「チューリングテスト」というものがあります。これはあるコンピュータプログラムに知能があるかどうかを測る基準となるテストで、人間が機械とテキストで会話し、人間の側が相手が機械か人間かを区別できなかった場合には、この機械は知能であるというテストに合格したとみなすというものです。



 しかしこのチューリングテストには反論がたくさんあって、一番有名なのはジョン・サールが1980年に書いた「中国語の部屋」という思考実験。これはどういうものかというと、部屋の中に閉じ込められた人がいるとします。この人は中国語をしゃべらないアメリカ人。そこに窓から中国語の手紙が投げ込まれます。全く読めないんだけど、部屋の中には、「こういう文字が書かれた中国語の手紙が投げ込まれたら、この中国語の文字で返事しろ」というマニュアルが置いてある。アメリカ人はその通りに見よう見まねで中国語の返事を書いて外に投げる。すると外にいる人には、中のアメリカ人がまるで中国語を解しているように見える、というわけです。



 この「中国語の部屋」思考実験は、興味深いことに現在の特化型AIがやっていることのアナロジーになっていますね。ディープラーニングはこの目の前の現実をパターン認識的な手法で認知し、そこからパターンに基づいて回答を得ている。これは人間の時系列の物語的な手法に基づいた思考とはまったく異なるものです。でも(AIの専門家ではない)人間から見ればそこは区別がつきにくく、まるで人間のようなAIが頭をひねって考えているように見えるというわけです。...

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