(350)ハリルホジッチが目指すサッカーとは一体何か?

(350)ハリルホジッチが目指すサッカーとは一体何か?

2017年10月05日発行

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メールマガジン「杉山茂樹のたかがサッカー、されどサッカー。」
(350)ハリルホジッチが目指すサッカーとは一体何か?

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 ハリルホジッチの招聘に関わった当時の専務理事、原博実氏と技術委員長、霜田正浩氏は、もはや代表の仕事に関わっていない。もちろん、現在の技術委員長、西野朗氏も、その職に就いたのが去年の3月なので、当事者ではない。会長の顔もその間、大仁邦彌氏(招聘時)から田嶋幸三氏(現在)へと変わっている。

 日本代表の現在のスタッフの中に、代表監督に対して責任の取れる人物は存在しない。本来は、西野技術委員長、田嶋会長にあるが、任命した責任者ではない。逃げ道は残されている。

 ハリルホジッチは、ひとりエアポケットに置かれたような存在だ。組織として、これは異常だ。ロシアW杯が終了すれば、ハリルホジッチは日本を離れ、帰国する。いわば一時的な、3年強に限られた代表強化スタッフだ。ザッケローニやジーコと同種の人間である。その後は日本とは関わりのない世界で、生きていく。

 日本サッカーの方向性を論じようとすれば、1年後には日本を去っているハリルホジッチを、その手の議論の主役に据えるのはナンセンスだ。アドバイスは求めるのはいいが、決めるのは日本人。目指す方向性に相応しい次期代表監督を探すのは日本人の仕事だ。

 原さんは、2014年ブラジルW杯で、グループリーグ最下位に終わると、「方向性は間違っていなかった」と述べ、ザッケローニのサッカーを否定しなかった。確かに、一応、攻撃的なサッカーではあった。ボール支配率は高かったが、相手ボール時に転じた瞬間、各所に穴が発生しやすいため、急な反撃を食いやすい、緩くて甘い隙だらけの攻撃的サッカーに陥った。コートジボアール、コロンビアには、そこを突かれ、敗れた。

 日本のボール支配率は、圧倒的強者であるコロンビアさえ上回った。スコアは1−4。対する支配率は、55対45で日本だった。試合の内容が簡単に見て取れる分かりやすいデータだ。試合後、主将の長谷部誠は悔しさを滲ませながらも、最後は気丈に、こう締めくくった。「我々らしい攻撃的なサッカーは貫けた」。繰り返しになるが、原さんも「方向性は間違っていなかった」と述べた。

 その原さんと霜田さんが次に招聘したアギーレは、相手ボール時の対応という点で、ザッケローニを上回った。引き続き支配率は高かったが、能天気さは影を潜めた。アジアカップの準々決勝でUAEにPK負けしたが、今後が期待できそうなサッカーだった。

 しかし大会後、アギーレは八百長疑惑問題で退任。いま振り返れば、あれはなんだったんだろうと嘆きたくなるほど、その後も大した問題に発展していないが、それはさておき、原ー霜田のコンビは、次なる監督としてハリルホジッチを招聘した。

 招いてびっくりとはこのことだった。ハリルホジッチは、これまでとは異なる方向性のサッカーを展開。ザッケローニーアギーレの延長上にはカテゴライズされない、引いて守ることも辞さない考え方の持ち主だった。

 混乱の原因はここにある。ハリルホジッチの代表監督就任に先立ち、路線変更の説明はなかった。アレっと面食らう感じだった。「縦に速いサッカー」を力説するハリルホジッチを見ていると、原ー霜田コンビに対する疑念が膨らむのだった。なぜ、なんの説明もなく路線を変えたのか。あるいは、ハリルホジッチの正体をよく確認せずに、招いてしまったのではないか。

 先日開かれた、6日(ニュージーランド)と10日(ハイチ)に行われる親善試合のメンバー発表記者会見で、ハリルホジッチは冒頭から持論を独演会のようなスタイルで展開した。

「日本のサッカー教育はボール支配率をベースに作られているようだ」と切り出し、それに対して否定的な言葉を並べた。

 サッカーの考え方は千差万別。ボール支配率至上主義(だとは思えないが、それはともかく)に抵抗を覚えるのは自由だが、ハリルホジッチが日本代表に就任した経緯を踏まえると大いなる違和感に襲われる。

 現在に至る経緯を知らないハリルホジッチに罪はない。このようなサッカーの方向性に関わる類の大きな話は本来、方向性を決めるべき技術委員長の口から発せられるべきものだ。日本サッカー界への違和感についての演説を、傍らに座っていた非招聘者である西野さんは、どんな思いで聞いていたのだろうか。

 ハリルホジッチに問題があるとすれば、説得力に欠けるその話の中身だ。30分近くに及んだ演説は、口ぶりこそ強気そうだったが、小気味よくなかった。言い切れていないので、中途半端。分かりにくかった。...

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