人間の知が「時間的な知」なら、特化型AIの知は「画像的な知」である 佐々木俊尚の未来地図レポート vol.469

人間の知が「時間的な知」なら、特化型AIの知は「画像的な知」である 佐々木俊尚の未来地図レポート vol.469

2017年10月09日発行

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佐々木俊尚の未来地図レポート     2017.10.9 Vol.469
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【今週のコンテンツ】

特集
人間の知が「時間的な知」なら、特化型AIの知は「画像的な知」である

〜〜人間を超える人工知能は本当に現れるのだろうか?(前編)

未来地図キュレーション

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■特集

人間の知が「時間的な知」なら、特化型AIの知は「画像的な知」である

〜〜人間を超える人工知能は本当に現れるのだろうか?(前編)
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 「人間を超える人工知能は現れるのか?」という議論が、盛んになっています。そこで今週と来週の本メルマガで、この問題を論じてみたいと思います。



 この議論はもともとはレイ・カーツワイルが2005年、「シンギュラリティ(技術的特異点)」という言葉を唱え、2045年に「人工知能は地球上で最も賢く最も有能な生命体としての人間を上回る」と主張したのがベースになっています。



 しかし議論が沸騰する直接のきっかけになったのは昨年3月、グーグル傘下のAI企業「ディープマインド」が開発した囲碁プログラム「アルファ碁(Alpha Go)」が、韓国の李世石九段を5戦4勝で破ったことでしょう。これを持ってしてマスコミなどの報道では「ついにAIの知能が人間を超えた」と騒ぎになり、「AI人類は支配される」と言った予言めいたことまでが盛んに語られるようになりました。


 このような報道が過熱した背景には、アルファ碁が「みずから学習して強くなった」と説明され、まるで自律的な生物のように扱われていたことがあるのではないでしょうか。



 しかしアルファ碁のようなAIは、意識を持っているわけではなく、自律的に自分で考えているわけでもありません。そもそも現在のAIは、人間のような知性を目指しているわけではないのです。



 AIには「汎用型」と「特化型」の二つに分類できると言われていて、アルファ碁をはじめとする現在のAIプログラムは後者の特化型、つまりある特定のタスクでのみ能力を発揮する自動機械的なソフトウェアです。特化型AIに行えるのは、次のようなことです。



(1)通常と異なるデータが存在すると、その差異を検知してフラグを立てる。

(2)過去のデータから特定のパターンを抽出し、同じようなパターンが他の場所や将来に起きる可能性があるかどうかを予測する。
(3)過去のデータから特徴を抽出し、その特徴を真似たデータを生成する。


 集約すればおおむねこの三つのことを行い、それに基づいて自動車の自動運転や自然言語処理、音声認識などを実現しているのです。アルファ碁もこれらが元になっています。



 なぜ汎用型と特化型に分かれているのか。特化型だけが進化しているのはなぜなのか。それを知るためには、AIの歴史を学ぶ必要があります。


 最初にAIの可能性が模索されるようになったのは1960年代。コンピュータ技術の黎明期から、人工的な知能をつくろうという試みは始まっていました。1980年代ごろまで取り組まれていた初期のAIは、エキスパートシステムと呼ばれる技術でした。これは専門家が判断する条件判断をプログラムにしたもので、たとえば医療現場で患者の状態をAIに入力していくと、その条件をフローチャートのように判断していき、最終的に何の病名かを出力するという仕組みになっていました。



 しかしこの手法では、条件や患者の状態の設定を人間が行わなければなりません。すると限られた設定範囲でしか判断できず、「人間の医師には判断できないような病状に気づく」というようなことは難しくなってしまうという問題があったのです。



 1990年代になると、ベイズ理論が注目されるようになります。これは18世紀の数学者トーマス・ベイズが考えた定理で、新たなできごとを予測する際に、すでに起きている事象を予測の材料として次々と加えていくことによって、予測の精度が高められるという考え方を採っています。このベイズ理論をもとにしたベイジアンフィルタという手法が登場し、これは迷惑メールのフィルタリングにも使われていることで有名になりました。



 どのような手法かというと、まず最初に、あらかじめ分類されている迷惑メールと普通のメールを比較し、それぞれにどのような単語が含まれ、それら...

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