ECの成長はアメリカの雇用にどう影響し、地域共同体をどう変えるか 佐々木俊尚の未来地図レポート vol.478

ECの成長はアメリカの雇用にどう影響し、地域共同体をどう変えるか 佐々木俊尚の未来地図レポート vol.478

2017年12月11日発行

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佐々木俊尚の未来地図レポート     2017.12.11 Vol.478
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http://www.pressa.jp/


【今週のコンテンツ】

特集
ECの成長はアメリカの雇用にどう影響し、地域共同体をどう変えるか
〜〜ネットショッピングと大型モールの関係はどう変わる?(後編)

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■特集

ECの成長はアメリカの雇用にどう影響し、地域共同体をどう変えるか
〜〜ネットショッピングと大型モールの関係はどう変わる?(後編)
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 アマゾンがアメリカの有名高級スーパー、ホールフーズを買収。一方で従来型のショッピングモール衰退が言われるようになって来て、再び小売業界は変化の時期を迎えているようです。


◆The 4 Reasons Why 2017 Is a Tipping Point for Retail
http://theatln.tc/2zHv56k


 この「2017年が小売業界の転換点になる4つの理由」という記事で書かれている4つのポイント。

(1)新しい若者のスローガンは「ショッピングモールに行って、ネットで買おう」

(2)「ブリックからクリックへ」の移行が小売の地域格差を拡大していく


 という二つのポイントを先週説明しました。2番目の地域格差についてさらに補足すると、従来型のモールが消滅して、EC主導型の富裕層向けモールが普及すれば、貧困層は買い物が不便になるということだけではありません。



 アメリカでは「ラストベルト」という言葉があるように、中西部などで従来の製造業が衰退して工場が閉鎖され、貧困化が加速しています。そういう中でショッピングモールというのは、単に買い物をする場所としてだけでなく、雇用を安定的に生み出す場所にもなっています。先の記事では、こう書いています。


「モールは地域経済や地域の共同体にとってなくてはならないものだ。モールが消滅すると雇用がなくなり、地方自治体の税収もなくなる」



 一方でショッピングモールが消滅するこのような地域経済の危機は、ECの配送センターによって埋められるということも起きているとも指摘されています。モールの変容によって、雇用の内容も変わっていくということなのでしょう。そこで、三番目のポイント。



(3)「レジ係」仕事が減り、「箱詰め」仕事が増えていく


 レジ係はアメリカでは最も一般的な仕事のひとつで、アメリカ国内で350万人がこの仕事に就いているといいます。今後、EC主導の店舗が増えて、実店舗では商品を見て触るだけで決済はオンラインで行うような方向に進むと、レジ係の仕事はだんだんと減っていくことになるでしょう。アメリカ労働省労働統計局も、この現象傾向が今後10年の間に起きるということを予測しています。



 アメリカでは20世紀の後半にウォルマートのような巨大スーパーが増加し、既存の小規模な小売店舗を潰していきました。これが地域の雇用を大きく変え、かつてはアメリカの田舎町ではお父さんの仕事は工場勤務か、そうでなければ小さなお店の商店主だったりしたわけなのですが、工場も商店もなくなって、ウォルマートとモールだけが残り、そこの仕事がメインになっていったということが起きたのですね。



 そこでモールが閉鎖され、レジ係の仕事がなくなるということはいったいどういうことなのか。そこで、ECの配送センターが失われた雇用をカバーしていくのではないかという予測も生まれてきているわけです。



 田舎のアメリカ人は、ショッピングモールでの買い物に多大の時間をかけています。毎週、自家用車を運転してモールに行き、駐車場所をウロウロと探し、巨大な施設の通路を延々と歩いて商品をカートに乗せ、そしてレジの行列に並んで購入し、再びクルマで帰る。これらは消費行動なのですが、これがEC主体に移行すると、この時間が大きく余る。これまでのようにモールに行かなくても、ネットからワンクリックでアマゾンの商品を購入できるようになったわけですから、日用品や食料品を購入する消費にかかる時間が大幅に減ることになります。



 そうするとこの時間を、雇用に振り分けるということも可能になってくる。配送センターの雇用は大きく、例えばアマゾンの最大規模のところであれば1000人の季節労働...

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