ウェアラブルの素地は整ったが、まだ普及への必要条件は揃っていない  佐々木俊尚の未来地図レポート Vol.269

ウェアラブルの素地は整ったが、まだ普及への必要条件は揃っていない  佐々木俊尚の未来地図レポート Vol.269

2013年11月04日発行

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佐々木俊尚の未来地図レポート       2013.11.4 Vol.269
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http://www.pressa.jp/



【今週のコンテンツ】

特集1 ウェアラブルの素地は整ったが、まだ普及への必要条件は揃っていない
~~「ウェアラブル」が現実になってきた理由は3つある

特集2 自分の社会とのつながりを「ポートフォリオ」で組み立てよう
~~これからの社会の本当のセーフティネットを考える(5)

今週のキュレーション

未来地図レシピ
~~超簡単、絶対失敗しないキノコ鍋のつくりかた



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特集1

ウェアラブルの素地は整ったが、まだ普及への必要条件は揃っていない
~~「ウェアラブル」が現実になってきた理由は3つある
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 身体に装着するウェアラブルデバイスは、昔からSF映画やマンガでお馴染みのガジェットです。今までは「SFチック」なイメージだったウェアラブルが、なぜいまリアルの製品として盛りあがってきているのでしょうか?

 それはひとことで言えば、「ウェアラブルデバイスが可能になった」という技術的な素地がととのってきたからです。その素地を大まかにいえば、以下の三つです。

(1)機器モジュールが超小型で低消費電力になった
(2)音声コントロールやモーションコントロールなどのハンズフリー技術が進化してきた
(3)高性能なコントローラーとしてのスマートフォンが普及してきた

 しかしこれは、裏返せば「素地は整ってきたけれども、必要条件が十分に揃ったとは言えない」というウェアラブルの現状にもつながってきます。2013年の現時点で不足しているのは、以下のような点でしょう。

(1)低消費電力化が進んできたとはいえ、まだまだバッテリー持続時間が短すぎる。
(2)ハンズフリー技術は進化してきたが、それらの技術をうまく使った斬新なユーザー体験(UX)が開発されていない。
(3)スマホは普及しているけれど、顔など身体に装着する心理的抵抗はかなり大きい。またスマホと違って知らず知らずのうちに写真が撮影されてしまったり、身体のデータが測定されてしまうことへのプライバシー侵害の不安がある。
(4)そうした不安などマイナス面を乗り越え、「それでも使いたい」と思わせるようなキラーアプリが存在しない。それがどのようなキラーアプリになるのかさえ今のところは展望できていない。

 その先の話はとりあえず置いておくとして、今回は上記の3つの「素地」について考えてみます。まずモジュールの小型化・低消費電力化。

 腕時計やメガネにも高性能なコンピュータが収まるような極小チップは、次々と現れてきています。これは本メルマガでも前に紹介しましたが、たとえばフィットネス向けのウェアラブル「フィットビット」にチップを提供しているフリースケール・セミコンダクタ社は今年初頭、大きさがわずか1.9ミリ×2ミリという極小のチップ「Kinetis KL02」を発表しました。

■身体をネット化」する世界最小のARMチップ
http://wired.jp/2013/02/28/freescales-tiny-arm-chip/

 2ミリ四方の大きさなのに、この中にプロセッサーやフラッシュメモリ、入出力制御など、コンピューターの基本要素がひととおり収められています。極端な言い方をすれば、要するに1台のパソコンが2ミリ四方の大きさに押し込められているということなのです。このチップを使えば、将来は薬のように呑み込んで体内に送り込み、健康状態を監視したり薬品を放出するような超々小型デバイスを開発することも可能でしょう。ウェアラブルデバイスならぬオーラル(経口)デバイスもあり得るということなのですね。

 このようにチップの極小化が進んできたことで、ウェアラブルが現実的なコンピューターとして機能するようになってきたということです。腕時計やメガネなど身体に装着する機器は、スマホやタブレットよりもずっと軽量で、装着感がないことを求められます。いまのスマホぐらいの重量を手首に装着していたのでは腕が疲れてしまいます。

 Kinetis KL02のような極小チップが次々登場してくれば、今後は腕時計やメガネだけでなく、身体のさまざまな部分にもウェアラブルを装着することが可能になってくるでしょう。

 まだ構想段階のようですが、さまざまなセンサーを組み込んだ「電子いれずみ(エレクトリックタトゥー)」のようなものも考えられています。

■Ele...

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