これからのコンテンツとコンテキストの悩ましい関係(後編) 佐々木俊尚の未来地図レポート Vol.285

これからのコンテンツとコンテキストの悩ましい関係(後編) 佐々木俊尚の未来地図レポート Vol.285

2014年03月03日発行

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佐々木俊尚の未来地図レポート       2014.3.3 Vol.285
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http://www.pressa.jp/



【今週のコンテンツ】

特集 これからのコンテンツとコンテキストの悩ましい関係(後編)
~~佐村河内問題、フィギュアスケート、STAP細胞、そしてマイルドヤンキーの共通点

未来地図レビュー
商店街の個人商店を軸に戦後の格差社会史を解明した超面白い本
~~「商店街はなぜ滅びるのか」を読む

未来地図レシピ 
「はちみつレモンチキン」は完璧な鶏肉料理だ!

今週のキュレーション




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特集

これからのコンテンツとコンテキストの悩ましい関係(後編)
~~佐村河内問題、フィギュアスケート、STAP細胞、そしてマイルドヤンキーの共通点
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 コンテンツだけでは流通しにくい。特にそれがクラシック音楽や現代音楽、現代アートなどのハイコンテキストな文化になればなるほど。

 そこでコンテンツの発信者は、そこに「物語」というコンテキストを加え、多くの人に受容されることを狙うわけです。フジコ・ヘミングさんには「無国籍者として貧困と孤独の半生を送り、今も天涯孤独でネコ9匹と暮らしている」という物語。そして佐村河内守氏には「被曝二世・全聾」という物語。

 これはいまやハイコンテキスト文化のみならず、メディアのあらゆる場所で行われています。

■フィギュアスケートの羽生結弦さんも理系女子の小保方さんも「現代のベートーベン」も、みんな同じだ。
http://huff.to/1eyYbCK

 このブログ記事は、「佐村河内」的な物語コンテキストの消費が、ソチ五輪フィギュアスケートの羽生さんや、STAP細胞の小保方さんのケースでも行われているということを指摘しています。羽生さんは震災の被災地出身であるという物語、小保方さんは「割烹着」「泣いた夜も」「リケジョ」といった皆さんご存じの一連の物語ですね。

 そしてブログはこう指摘します。

「かつてNHKで強い人気を誇ったプロジェクトXも、企業が実現困難な製品を苦労の末開発する、とても敵わない巨大企業を相手に打ち勝つ、といったストーリー構成になっている。モノがあふれる現代では『商品ではなくストーリーを売れ』と言われるのもビジネスの世界ではもはや珍しい話ではない」

 そもそもこういう「物語消費」とは何でしょうか。これは実のところマスメディアの報道だけでなく、商品の購入や広告など、メディアのさまざまな局面で現れてきている大きな現象であると考えています。

 これは『キュレーションの時代』(2011年)でも書いたことですが、人がなにかの商品を消費するとき、その消費のしかたは「機能消費」「記号消費」と進んできています。そして記号消費には、1990年代初めのバブル経済の時期までは「背伸び消費」であり、それがいま「物語消費」へと変わってきています。

 たとえばクルマで考えるとわかりやすいでしょう。

 もともとクルマを購入するということの意味は、移動の手段という機能のためでした。アメリカのT型フォードとか、日本の大衆車の先駆けであるパブリカなどの時代には、ただひたすら「クルマを買えば移動が自由になる」ということを目指して人々はクルマを購入したわけです。

 しかし消費社会が成熟してきて、クルマをだれもが持つようになると、だんだんと「クルマを持っているだけ」では満足できなくなってくる。そこでBMWやメルセデスベンツのような輸入車を買い「自分はこういう高級車に乗れるハイソな人間なんだ」という記号に頼るようになる。「いつかはクラウン」という広告コピーがありましたが、サラリーマンが部長とか役員の役職にまで上がってくると、自分のポジションの確認のために国産車の最上級であるクラウンを買う。こういう消費はクルマの機能ではなく、特定のクルマの持つ記号を消費しているから、記号消費。そしてその記号はあくまでも、「自分をハイソに見せたい」「自分を背伸びさせたい」という欲求を満たすものだったわけで、「背伸び消費」だったということです。

 しかしこうした背伸び消費は、2000年代になると衰退してきます。ルイ・ヴィトンやシャネルなどの高級ブランドのバッグを持つ若い女性は少なくなり、高級輸入車の所有をステータスと感じる若者もいなくなってしまいました。

 このあたりの変化を描いていて最近とても面白く読んだのが、博報堂の原田曜平さんが書いた『ヤンキー経済』という本。
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